人民元/円の今後の見通し・予想は?過去の為替レートの推移やオンショア/オフショアの違いを解説
世界第2位の経済規模を誇る超大国、中国。
その法定通貨である人民元の国際経済における存在感は、日増しに大きくなってきています。
しかしFXトレードの観点から見たときに、人民元にはもう一つの側面があることをご存じでしょうか。
実は人民元は、為替レートが比較的安定している割に高金利な新興国通貨として定評があり、その政策金利は2024年3月時点で4.35%となっています。
これは、マイナス金利が続いている日本と比べてはもちろんのこと、イギリスポンドやユーロ、オーストラリアドルなどと比べても高い水準となっています。
一方で、人民元には中国の特殊な事情による注意点も存在します。
そこで今回の記事では、人民元の特徴と動向について分かりやすくまとめてみました。
ぜひ、参考にしてみてください。
- 人民元は世界シェア第4位の「大物」通貨
- 中国の特殊な事情により「管理された」通貨のため、レートが比較的安定
- 日本より政策金利が高いため、スワップポイントの獲得に向いている
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人民元とは?
人民元は、GDP(国内総生産)世界第2位の経済規模を誇る中国(正式名称:中華人民共和国)の法定通貨です。
中国の経済発展によって急速に国際化が進んでいる一方で、特殊な事情によって「管理された」通貨でもあります。
その特徴を順番にみていきましょう。
国際決済シェア 世界第4位の「大物」通貨
2010年にGDPで日本を抜いて世界2位となった中国ですが、その後も急速な経済発展を続けてきました。
その後10年程が経った現在では日本との差が3倍近く開いてしまっているほどですから、その勢いの強さが伺えます。
中国経済の規模が大きくなれば当然、国際取引の場で人民元が使われる場面も多くなってきます。
2024年現在では、人民元が占める国際決済シェアは世界第4位に躍り出ています。
これは、アメリカドル、ユーロ、イギリスポンドに次ぐ順位となっており、5位の日本円よりも高い順位です。
新興国通貨として位置付けられている人民元ですが、国際決済シェアの面では既にメジャー通貨に匹敵する規模の「大物」と言えるでしょう。
さて、これほどの規模を誇る人民元ですが、FXや外為取引の現場で「メジャー通貨」として扱われていないことに違和感を覚える方もいるのではないでしょうか。
IMF(国際通貨基金)では主要通貨をアメリカドル・ユーロ・イギリスポンド・日本円の4通貨と定めています。
FXの業界でも、上記の4通貨にオーストラリアドル・カナダドル・スイスフランなどを加えて「メジャー通貨」と呼ばれることはありますが、人民元が「メジャー通貨」として扱われている場面はあまり見られません。
その要因のひとつとして、国際決済シェアだけでは測ることができない人民元の特徴があると言われています。
オンショア・オフショア 2つの取引市場
人民元の持つ特徴の一つとして、同じ通貨でありながら「オンショア市場」と「オフショア市場」の2つの取引市場が存在していることが挙げられます。
「オンショア市場」とは中国国内向けの市場で、原則として中国本土の居住者や貿易実需のある参加者だけが取引できる市場とされています。
一方で「オフショア市場」とは、国外の投資家がある程度自由に人民元を取引できる市場として開放されています。
同じ通貨であるにも関わらず、異なる2つの取引市場が存在するのは何故でしょうか。
実は中国でも、元々はひとつの取引市場しかありませんでした。
しかし社会主義・共産主義国家である中国では、計画経済の一環として為替レートも当局の強い統制下に置かれていたため、海外投資家のマネーが集まりにくく、発展してきた経済力に対して人民元の流動性が低い状態が問題となっていました。
そこで、2010年に従来の国内市場と区別して海外投資家向けの「オフショア市場」を新設し、そこでは自由な取引と需給に基づく実勢レートが認められることになったのです。
参加者も制度も異なる2つの取引市場が存在するのですから、当然、為替レートもそれぞれ別に存在することになります。
このため、一般的に「オンショア市場」で取引される人民元は「CNY」、「オフショア市場」で取引される人民元は「CNH」と表記して区別されています。
国内からFXで人民元を取引する場合は基本的に「CNH」が取引対象となりますので、覚えておきましょう。
管理変動相場制による為替レート操作
人民元には2つの取引市場と、それぞれの為替レートが存在することは前項でご紹介しました。
では、この2つの為替レートは常に乖離した状態なのかというと、そうではありません。
為替レートがそれぞれ存在するとはいえ元はひとつの通貨ですから、それぞれの為替レートは互いに影響しあって収束していきます。
つまり、自由な市場原理によって実勢レートが決まるはずの「オフショア市場」の人民元(CNH)も、実際には「オンショア市場」の人民元(CNY)の為替レートから強い影響を受けることになります。
そして、「オンショア市場」の人民元(CNY)の為替レートは、管理変動相場制と呼ばれる仕組みによって当局の管理下に置かれているのです。
管理変動相場制とは、PBOC(中国人民銀行)が毎日発表する「中間レート」に基づいて、日々の変動幅をその±2%以内に制限するというものです。
「中間レート」はアメリカドルをはじめとする主要貿易相手の通貨の価格を参考にしつつ、経済情勢などを見ながら中国当局が決定します。
こうしたことから、人民元の為替レートは中国当局の意向が強く反映されるという特徴があるのです。
人民元/円の現在の為替レート
それでは、現在の人民元/円の為替レートの推移を見ていきましょう。
直近3年間では人民元高/円安の傾向が続いてきました。
この動きの特徴をわかりやすくするため、同じ期間のアメリカドル/円のチャートと比較してみましょう。
人民元とアメリカドルの対円レートは非常によく似た動きをしていることが分かると思います。
アメリカドル/円の推移は、一般的に日米の金利差の拡大などを背景とした円安ドル高の動きと、その後の日銀覆面介入やアメリカ経済の先行き不透明感による下落で説明されていますが、人民元についてはどうでしょうか。
人民元は直近で利下げを繰り返しており、日中の金利差はむしろ縮小しています。
それにも関わらず、人民元とアメリカドルの対円レートが似た推移を見せているところに、人民元の為替レートが当局の意向を反映していると言われる所以を見て取ることができます。
人民元の「中間レート」は主要貿易相手国の通貨レートが参考にされることは前項でご紹介しましたが、実際には主要貿易国の中でも特にアメリカドルとの強い連動性があると言われています。
理由は公表されていませんが、少なくとも最大の貿易相手国であるアメリカとの為替レートの安定が、中国経済にとって有利であることが背景として考えられています。
人民元/円の長期の為替レート
続いて、長期の人民元/円の為替レートの推移も見ていきましょう。
2015年頃には20円を超える時もあった人民元ですが、2019年後半から2020年前半にかけて14円台まで下落していた時期もありました。
しかし、現在は円安の影響もあり、再び21円台を記録しています。
10年の間の変動幅としては、半値以下になることも珍しくないトルコリラやメキシコペソ、南アフリカランドなどの新興国通貨と比べて、比較的安定していると言って良いでしょう。
これもまた、中国当局が過度な為替変動を抑制する傾向にあることの表れと言えるのかもしれません。
人民元/円の過去の変動要因
過度な為替変動を抑制する傾向にある人民元ですが、それでも過去には幾度かの大きな変動を経験しています。
ここでは人民元/円の過去の大きな変動とその要因を見ていきましょう。
- 2014年 日銀金融緩和政策を背景とした人民元高/円安
- 2015年 人民元ショックによる人民元安/円高
- 2018年 米中貿易摩擦と人民元安/円高
- 2020年 コロナショックによるリスクオフと回復
- 2021年以降 全面的な円安展開
2014年 日銀金融緩和政策を背景とした人民元高/円安
今では当たり前のようになってしまった日本の金融緩和政策ですが、景気回復のために長年にわたって段階的に拡大されてきました。
その中で2014年10月に決定された量的・質的金融緩和の拡大を受けて、日米の金融政策の差が意識されたことで円安ドル高が進行した際に、日中間においても同様に人民元高/円安が進行しました。
同年夏頃には16.2円~16.5円でレンジを形成していましたが、政策発表から年末にかけて19円台にまで上昇しています。
ドル/円相場に影響がある出来事は、人民元/円相場にも同じくらいの影響がでる場合が多いので注意しましょう。
2015年 人民元ショックによる人民元安/円高
人民元はアメリカドルとの連動性が強く、対アメリカドルにおける過度な為替変動を抑制する傾向にあることはこれまでにご紹介してきました。
しかし、中国当局の意向により突如として人民元の引き下げが行われ、世界中に衝撃を与えたことがありました。
いわゆる「人民元ショック」といわれている出来事です。
「人民元ショック」とは、2015年8月11日にPBOC(中国人民銀行)が前触れもなく人民元を大幅に引き下げたことに端を発した、世界的な混乱のことです。
前述してきたように、中国が「中間レート」を意図的に大きく変更すれば人民元の為替レートもそのまま追随して急変してしまいます。
しかし「人民元ショック」の際はそれだけに留まらず、中国当局が自国の景気を下支えするために人民元安へ誘導しているとの観測が広がり、他国の競争力が相対的に低下する懸念から世界同時株安にまで波及する事態となりました。
リスクオフによる円買いの動きも背景に、人民元は対アメリカドルよりも対円でより大きく下落することになったのです。
比較的安定していると言われる人民元ですが、中国当局の意向次第では為替レートが急変することも忘れないようにしましょう。
2018年 米中貿易摩擦と人民元安/円高
中国の国際競争力が高まるにつれて、アメリカの対中貿易赤字が問題視されるようになりました。
中国製品が強くなることでアメリカ製品が売れなくなると、アメリカ国内の雇用が失われることに繋がります。
そこで「アメリカ・ファースト」を掲げて大統領に就任したドナルド・トランプ氏が、2018年7月に対中貿易赤字の解消策として中国への関税強化を打ち出しました。
これに対して中国もアメリカへの報復関税を発動し、そこから両国による報復の連鎖が始まります。
これが、米中貿易摩擦と呼ばれているものです。
報復が報復を呼ぶ米中貿易摩擦の激化を受けて、人民元は対円・対アメリカドルともに大きく下落しました。
その後、アメリカの大統領がドナルド・トランプ氏からジョー・バイデン氏に代わっても、米中の対立構造は続いています。
人民元は米中関係の動向によっても大きく左右されると言ってよいでしょう。
2020年 コロナショックによるリスクオフと回復
2020年に入ると新型コロナウィルスの世界的な感染拡大の影響を受けて、多くの通貨でリスクオフの動きが広がりました。
2019年12月にはすでに武漢市で最初の感染者が発見されていた中国も例外ではなく、この時期に人民元は大きな下落を見せています。
1月には16円を超える時もあった人民元/円ですが、3月には14円台にまで下落しています。
一方で社会主義国である中国は、その強い統制力によって一旦は感染拡大の収束に成功しており、2020年の後半には人民元も上昇に転じていきました。
2021年~2022年 全面的な円安展開
当初はリスクオフによる円高を招いていたコロナ禍ですが、2021年に入ると潮目が大きく変わってきます。
新型コロナウィルスのワクチンが開発され世界各国で大規模接種が進むと、経済の再開への機運が高まりました。
アメリカを中心に大規模な経済対策も打ち出されると、インフレ懸念から各国の政策金利も上昇し始めます。
しかし、そのような中でも日本は金融緩和政策を堅持したことで各国との金利差が拡大し続け、全面的な円安が長期にわたって継続する事態となりました。
この間、中国は利上げを行ってはいませんが、人民元とアメリカドルが概ね連動した動きをしていることから人民元/円も大幅な円安が進みました。
2023年 ゼロコロナ政策の転換
国際社会ではコロナの緩和が進む中で、中国は独自にゼロコロナ政策を進めました。
厳しい行動制限により経済後退の懸念から大きく人民元安が続きます。
ゼロコロナ政策により中国国民の不満は大きく、各地で大規模なデモ活動が起きました。
その結果、中国政府はゼロコロナ政策を白紙にしており、2024年現在は徐々に通貨安も回復に向かっています。
人民元/円の予想・今後の見通し
ここまで人民元の特徴と過去の変動についてご紹介してきました。
続いて、人民元の今後の見通しについて金融機関がどのような予想をしているのかを見ていきましょう。
野村證券
野村證券で発表されたレポートの中で以下のように分析しています。
民間の投資・消費刺激政策の効果(合計0.7兆元)は非正規財政による資金調達の萎 縮(約0.9兆元)を概ね相殺する規模である。それでも正規枠の拡張度合いは限定的 (前年比+3.9%)であり、経済成長率目標(+5.0%)に及ばず、実態としての24年成長率 は4.0%近傍に止まる可能性が依然大きいと考えられる。勿論、民間の投資・消費刺 激政策の詳細次第で、対策効果への期待も上下し得るが、民間部門のリスクセンチメ ントの脆弱さを考えると、若干下振れリスクを意識する必要もあるだろう。
野村證券 国際金融為替マンスリー
人民銀行は元安牽制の姿勢について触れています。
カントリー・ガーデンの債務再編の前進といった好材料があるものの、住宅販売の改善などの安心材料もない限り不安定になるとしています。
三菱UFJ銀行
次に、三菱UFJ銀行から発表されたレポートを見てみます。
主要都市の新築不動産価格が下落し、大手不動産会社の債務 不履行が報じられるなど、厳しい経済状況に変わりはない。また、 若年層を中心とした雇用の悪化も報じられており、消費増加と物価 上昇は、一時的なものにとどまりそうだ。人民銀は15日にMLF金利を 2.50%で据え置くことを決定した。14日に潘功勝総裁が、社会全体の資金調達コストを 「緩やかに低下させる」と発言し、拙速な金融緩和の強化に慎重な姿 勢を示していた通りになったと言える。米金利の下げ止まりにより、 中米金利差が改めて拡大しており、利下げによって人民元安圧力が強まることを避けたいとの思惑がちらつく。
三菱UFJ銀行 FX Weekly
米中の金利差拡大が減速しつつある状況に注目し、人民元は底堅い推移を見せると予想されている模様です。
人民元の取引をする際にはこのあたりの情勢に注意しておくと良いでしょう。
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2005年にはスマートフォン向けのアプリをいち早くリリースしました。
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人民元/円に関するよくある質問
ここでは、FXで人民元/円を取引する際によくある質問と回答をまとめています。
これから人民元の取引を検討されている方は、参考にしてみてください。
人民元/円のスワップポイントは?
人民元の政策金利は2024年5月時点で3.45%となっており、0.1%の日本円と比べると大幅に高い水準となっています。
そのため、人民元/円の取引ではスワップポイントで利益を得ることが可能です。
例えば、外為どっとコムでは人民元を円で買った場合のスワップポイントが30円*となっています。
1万円を証拠金として25万円分の人民元を20円で購入した場合、毎日37.5円のスワップポイントが発生することになり、年間で換算すると13,000円超を獲得できる計算となります。
もちろん、上記はあくまで計算上の話であり、為替レートやスワップポイントは日々変動する点に留意が必要です。
適切にリスク管理をしながらであれば、人民元はスワップポイントを獲得する取引に向いている通貨と言えるでしょう。
*2024年5月時点 10,000通貨あたり
人民元/円の取引がおすすめな人は?
前述してきた通り、人民元の為替レートには中国当局の意向が強く反映されるという特徴があります。
一方で中国当局が意図していない過度な為替変動については、抑制される傾向にあります。
このため人民元の為替レートは比較的安定している場面が多いと言われています。
加えて、日中間の金利差によって人民元/円ではスワップポイントが発生します。
これらの特徴から、人民元は中長期保有でスワップポイントを獲得したい人に向いている通貨と言えるでしょう。
但し、人民元ショックの事例に代表されるように、中国当局の政策変更によって為替レートが急変するリスクもありますので、レバレッジのかけすぎには注意しましょう。
人民元/円を取引する際の注意点は?
人民元を取引する際には、中国共産党の一党支配による素早い政策変更に伴うリスクを考慮する必要があります。
これは金融政策の変更による為替レートへの影響に限った話ではなく、中国の地政学的なリスクについても同様です。
中国を巡っては、ウクライナ危機に対する西側諸国とのスタンスの違いや台湾に対する姿勢など、国際的な緊張を呼ぶテーマが多く存在します。
一方で、近年では人民元が世界第4位の国際決済シェアを占めるなど、中国経済と人民元の国際化が進んでいます。
情勢を見極めながら、リスクとリターンのバランスをとることが大事と言えるでしょう。
人民元/円の見通しまとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は人民元/円の特徴と動向についてご紹介してきました。
- 人民元はシェア世界第4位の「大物」通貨
- 中国の特殊な事情で「管理された」通貨なため、レートが比較的安定
- 日本より高い政策金利により、スワップポイントで稼ぐのに向いている
- 人民元/円で稼ぐなら外為どっとコムがオススメ
人民元でスワップポイントを獲得するには、証券会社でFX口座を開設する必要があります。
外為どっとコムであれば業界最高水準のスワップポイントを獲得しながら取引をすることができます。
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